ウルソの読書記録

素人が暇潰しに読んだ本などの感想と紹介を書いていくブログです

268冊目『幸福と人生の意味の哲学』山口尚

 

 

あらかじめ一般的なことを述べれば、「幸福とは何か」に関する主義主張について、<どれが正しいのか>という観点から各々の立場の長所や短所を吟味する、というのは幸福の論じ方として歪んでいる、ということ。それでは魂がまったく震えません。もちろん、魂が震えるかどうかなどどうでもいいと考えているひとが、あの種の議論を楽しむわけなのですが、本書は「それでは駄目だ」と明示的に主張します。P20~

 

絶望や耐えがたい苦しみの中にいるとき、生きている意味はあるのか?それは生きているといえるのか?幸福はどこにあるのか?

それでも生きていたいし、もう楽になりたいという考えもある。

人の人生の意味と幸福の意味はどこにあるのか

例えば分析哲学の分野で人生の意味の哲学が論じられたりするが、論理の問題では上記のような論じ方となり、実際にそれに直面したり悩んだりしている人にとってはあまり納得できるものではないものになっている印象がある。

本書は、(その結論的なものに同意するかは別にして)それらとは一線を画している感がある。

人生の意味や幸福の意味は本質的には個人の内部のものであり、分かち合えないものではあるかもしれないけれど、それでも、伝わるものや救いとなるものがあるのだと思う。

 

267冊目『死ぬのが怖くてたまらない。だから、その正体が知りたかった。』浦出美緒

 

 

死んだら、そこで私は終了。その方がごく自然に感じられる。だが、その結論が怖い。私という意識が永遠になくなることが耐えられない。次があるなら死は怖くない。次がないと思ってしまうから死が怖い。P18~

タナトフォビア(死恐怖症)の著者が、死の概念を考えるために医者、宗教社会学者、脳科学者、哲学者、作家に問いかけていく。

それぞれの専門的視点から死について述べられていくけれど、医学などの科学的視点ではタナトフォビアの人の根源的恐怖は理解しえないし解決しえない。

宗教的視点では、科学的思考の発達した現代においては信仰の問題になるが、信じ切ることがなかなか難しい。

そうすると救いはやはり哲学や物語になってくるのだろうか。

 

僕個人としてもタナトフォビア的傾向があり、実存や独在性、自由意志の問題についてずっと考えてきているのもあって著者の感覚に納得できる点が多々あった。

こういったものは、最終的には個人の内部の問題になってくるのだろうけれども、それでも、何故死が怖いのか、どう生きるべきか、考えて行くことは必要だし、

同じようなことを考えている人がいるというのは一つの救いとなった本でした。

266冊目『時をかけるゆとり』朝井リョウ

 

 

『桐島部活やめるってよ』の著者朝井リョウのエッセイ集。

朝井リョウといえば、個人的には一般的な(常識的な)集団の中で行きながらも、精神的に孤立している人(集団の中での孤独)について書くのが旨いなあという印象を持っている作家さんなんだけれども、

エッセイは作品の印象とは全く違って面白いw

物凄く行動的だし、これだけ見るとかなり陽キャな人種としてみえるけれど、その一方で何か闇を抱えているんだろうかw

ちょっと前にゆとりシリーズ3部作で(一応?)完結したっぽいので3作とも読みたい✨

265冊目『ナルニア国物語6 魔術師のおい』C.S.ルイス

 

 

ナルニア国物語の第6巻!は、ナルニア国物語の始まりの物語。

ロンドンに住むディゴリーとポリーは魔術研究をしているアンドリュー伯父により異世界へと飛ばされ、滅びの都チャーンの女王を目覚めさせてしまった。

ロンドンまでついてきた彼女をもとの世界に戻そうと奮闘するふたりが迷い込んだのは、また別の世界。そこでは一頭のライオンが新しい国を想像しようとしていた。(裏表紙から抜粋)

 

まずアンドリュー伯父がクソ野郎なんだけれども、女王(=1巻に出てくる氷の女王)に振り回されて散々な目に合うのでスカッとざまあ系でもあり面白いw

狭間の世界の存在(そこでは、女王は物凄く弱体化する)、時の始まりと世界のはじまり、ナルニア国はどのように成り立ったのか。

初代国王の誕生からナルニアの困難のはじまりまで、ナルニア世界の謎が明かされて面白い巻✨

次で最終巻~。物語を読み終えるのがもったいなくて少しづづしか読まなくなる症候群が発動中(笑

 

264冊目『<私>をめぐる対決 — 独在性を哲学する』永井均、森岡正博

 

 

現代哲学ラボ・シリーズの第2巻

『日本トップの哲学者が集い、議論のレベルを落とすことなく、しかしできるだけわかりやすい言葉で、次世代に哲学を伝えることを目的として始まった「現代哲学ラボ」』での講演・討論に追補し書籍化されたもの。

全4巻の予定らしいけれど、2021年に本書が出た後は続刊が出ていない。

なんか事情があるんだろうか・・・・・・

 

このシリーズの特徴は、哲学関係の本によくある西洋哲学者の解釈論ではなく、日本の哲学者が、自身の研究している哲学を、日本の言語で展開していくところにある。

今巻は、永井均の独在性の哲学が中心となっている。

「ここに存在する、私」を<私>とし、考える。この<私>は<私>しか理解しえないものであって、他者と分かりあえるものではない。実存としての私。

死を考えるとき、<私>が消えてなくなることが個人的には一番の問題であり恐怖なんだけれども、その<私>が何なのかを哲学していて面白い✨