個人的評価★★★★☆
角川ソフィア文庫の仏教の思想シリーズの第2巻(昭和44年に角川書店からでた書籍が文庫化されたもの)
主として説一切有部(=上座部仏教(小乗仏教)から分派した学派)の思想体系を、世親のアビダルマ俱舎論を中心にアビダルマの考え方を一般向けに概説していく本
アビダルマは、いくつかの定義があるが、おおまかにいうと阿含経(ブッダの教えを集めたもの)にたいする研究・論議を通して体系化された論のこと
ダルマ=法・真理
ちなみに、アビダルマ倶舎論の著者世親は、その後大乗仏教に転向して、そちらでも大家となっていて面白いw
アビダルマは、かなり哲学的色彩・存在分析的な側面が強く、体系化されている反面、煩瑣的というか学舎に引きこもって注釈や体系化に熱心な悪い意味での学者的な側面も強い印象を与えてくるが、
本書ではその側面の指摘はしつつ、『なんのために当時の仏教徒たちはアビダルマ論書をまとめていったのか』という本質的な点をベースに概説していく。
アビダルマがなければ、その後の大乗仏教の展開や思想的進展もなかったという意味で興味深い。
仏教思想は、アビダルマにつづいて、大乗仏教という形で唯識などを中心にして展開するわけですが、日本ではそれが実践オンリーの形になってしまって、仏教の理論体系はどこかに飛んでしまったわけです。仏教の理論体系というものを再把握するためには、あらためて悟性的な立場に戻って、仏教思想の中に鋭い論理的な問題意識を取り戻す必要があるのではないか。その点で『倶舎論』というのは再評価されてよいと思う。P255~引用
あとは、ちょっと雑学的になるけれど、『いろは歌』が涅槃行の聖行品を元ネタにして刹那滅の思想のエッセンスを現わした歌っていう記述みてびっくりしたw
諸行は無常なり 是生滅の法なり
生滅滅し已りて 寂滅を楽と為す
アビダルマ倶舎論は、原子論や独特の宇宙観は知っていたけれど、それ以外はよくしらなかったのでとても興味深い本でした✨