ウルソの読書記録

素人が暇潰しに読んだ本などの感想と紹介を書いていくブログです

56冊目『二都物語』チャールズ・ディケンズ

 

 

個人的評価★★★★☆

 

『いま行っていることは、いままでにしたどんなことより、はるかにいいことだ。これから行くところは、いままでに知っているどんなところより、はるかに素晴らしい安らぎの地だ。』

ギロチンを前にしてのシドニー・カールトンの言葉。

 

物語の舞台は?

フランス革命前後のフランスとイギリス。ロンドンとパリの二つの都を中心に物語が展開されて行くので二都物語という、なんかカッコいい名前の付け方である。

 

フランスの暴政を嫌って渡英した亡命貴族のチャールズ・ダーネイ、人生に絶望した放蕩無頼の弁護士シドニー・カートン、無実の罪でバスティーユ監獄に投獄されていたマネット医師、そしてその娘ルーシーを中心に物語が展開していく。

チャールズ・ダーネイとシドニー・カールトンは顔や背格好が(雰囲気の違いを除けば)そっくりで、二人ともマネット医師の娘ルーシーに恋をしている。

 

けれども、シドニー・カールトンは酒浸りの自分にはルーシーにはふさわしくないと(愛の告白をしたうえで)身を引き、ダーネイとルーシーの結婚を祝い、良き友人として生きていくことになる。

 

そんな中、フランスでは革命の嵐が吹き始め、元の領地の執事から手紙を受けたダーネイは一度フランスに戻ることを決意する。

そして戻ったら捕って死刑を宣告されるが・・・

という話。

 

さすがは文豪ディケンズだけあって、当時の未熟な裁判の質の低さや、市民の粗雑さ、貴族の傲慢さと主人公たちの誠実さが対比的に描かれていて、小説自体は長編であるが、一気に読ませる力がある。

王政の過酷さ、フランス革命の悲劇性、ギロチンの残酷さなど、どこかに偏るのではなく、それぞれ問題があることを浮き彫りにしてくる。

最後の三章は、シドニー・カールトンの高潔さに感動するし、人の尊厳について考えさせられながらも読むのが止められない面白さがある。

またそのうち読み返したい本。