個人的評価★★★★☆
歩き出した列の先頭に、大きく肩を波打たせて必死についてゆくIの姿がありました。Iの母親は、校門のところで見送る父兄たちから、一人離れて見送っていました。
私は、愛という字を見ていると、なぜかこの時のねずみ色の汚れた風呂敷とポカポカとあたたかいゆでたまごのぬく味と、いつまでも見送っていた母親の姿を思い出してしまうのです。
『ゆでたまご』P128
XのFFさんの投稿をみて面白そうだな~と思って購入。
向田邦子は名前は知ってたけど作品読んだことなかった勢である!
前半6篇は短編小説みたいな感じ。
後半19篇はエッセイ。短編小説も良かったけれど、エッセイが向田邦子の本領と言えるような威力を持っている本。
本業は売れっ子のテレビ番組の脚本家で、昔のドラマ特集とか見たことあるなら聞いたことあるTV番組が多々ある(寺内貫太郎一家とか)
しかし、この時代(幼少から成年までに戦争を体験し、戦後花開いた世代)の作家さんだからなのか、向田邦子が特殊なのか分からないけれど、
作品は情緒的な流れではあるんだけども、一貫して底の方に透徹した人間観察のようなものが感じられるのがゾクゾクして面白い✨
どちらも作品をある意味ではひっくりかえす破調がとても小気味良い。
エッセイは断トツで『ゆでたまご』が良かった。
何回か読み直したけど、読むたびに泣いてしまうので良くない(笑)
というわけで、普段全く読まないジャンルに手を出してみたら、思いの外素晴らしい作品に出会えて満足でした✨
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