個人的評価★★★★★
ぼくがもっと何も知らなくて、わがままで、あまえんぼうであった時代、僕も妹と同じように大事な人たちがじつはみんないつの日か死んでしまって会えなくなるのだという事実に気づいて、本当にびっくりしたことがあった。
ぼくはもちろん生き物がいつか死ぬことは知っていたけれども、そのことが本当の本当に自分に関係あるものだという気がしなかったのだ。
どんなに運がよくても、どんなにいやだと思っても、ぜったいにそれから逃げられないという事実に気づいたとき、真っ黒の大きな壁がぐいぐい迫ってくるような気がした。(P247~)
『アオヤマ君、私はなぜ生まれてきたのだろう?』
『わかりません』
『君は自分がなぜ生まれてきたのか知ってる?』
『ぼくはウチダ君と、ときどきそういう話をします。でもそれは僕らにはむずかしい。そういうことを考えていると頭がきーんとするってウチダ君はいいます。』
森見登美彦といえば『夜は短し歩けよ乙女』や『四畳半神話大系』のような腐れ大学生が主人公の作品が目立つけれど、この小説は小学生が主人公の物語(とはいえ大人びてはいる)
主人公のアオヤマ少年が住む新興住宅街にある日なぜかペンギンが現れたことから様々な不思議な現象に巻き込まれて行く。
それらの現象には主人公が思慕する歯科医院のお姉さんの存在が鍵となっているようである。
アオヤマ少年は友達たちと、様々な謎を研究していくが・・・
という感じの話。
自分が子どもだったころを思い出させてくれるようなこともあるし(これはこれでそういった描写を出来るのは凄いと思う)、子どもの視点から見た根源的な事柄への疑問(世界とは?私の存在とは?死とは?)がポンと入ってきてそれが思いのほか刺さる作品。
冒頭の引用も、お姉さんの正体や物語の展開に沿って読むと大変感動する。
森見登美彦作品では四畳半神話大系の次に好きな作品なので★5ということで✨笑
『アオヤマ君の世界では、ぼくは死ぬかもしれない。でもそれはアオヤマ君が僕が死んだのを外から見るからなんだ。ぼくがぼくを見ているわけじゃない。ぼくはこっちの世界にいる・・・わかる?』