ウルソの読書記録

素人が暇潰しに読んだ本などの感想と紹介を書いていくブログです

39冊目「カラハリが呼んでいる」マーク&ディーリア・オーエンズ

カラハリが呼んでいる

 

入院中で中々読書が進まない、、、

 

 

個人的評価★★★★☆

 

小説ザリガニの鳴くところの著者ディーリアと、その夫マーク(執筆当時。現在は離婚)によるノンフィクション。

原著は1985年に出版
邦訳は1988年に早川書房から単行本で出版
その後、2021年のザリガニの鳴くところの人気に伴い文庫化されたみたい。

20冊目「ザリガニの鳴くところ」ディーリア・オーエンズ - ウルソの読書記録


1974年からの7年間に、動物行動学者である2人がボツワナ奥地のカラハリ動物保護区内(ほぼ未踏地)で行ったフィールドワークや経緯、出来事を綴ったもの。


プロローグ・エピローグ含めて全28章のうち、10章をディーリア、17章をマーク、エピローグを2人で執筆している。
中盤からディーリアの執筆の章が増えてくるが、マークの著述に対してディーリアの著述はより情緒的なものになっていて、(別人なので当然ではあるが)同じ体験でも著述者によって色が出ること、マークが学者的なのに対し、ディーリアは作家的な傾向があり、後からみれば小説家になることに繋がっている感じがして面白い。


本作は、ほぼ無一文からスタートした2人がアフリカ奥地での生活を通して、自然の素晴らしさや過酷さ、動物との関係の深化と観測者であるが故の葛藤、野生に近づきすぎて街(都市)での生活への疎外感を感じるようになるなど、観測する側の変容(成長)が感じられるあたり、フィールドワークの面白さがなんとなくわかる良書だなぁと思った。
後半では自然に対する文明(資本主義)の侵食とそれに対する抵抗も描かれていて、40年近く前の著作ではあるけれど現代にも通じるところがあって興味深い。


基本的に、文化人類学とかもそうだけどフィールドワークのノンフィクションとかにはハズレが少ないし、自然描写とかはやはり素晴らしいものがあるのでオススメできる本です