ウルソの読書記録

素人が暇潰しに読んだ本などの感想と紹介を書いていくブログです

48冊目「中世への旅  都市と庶民」ハインリヒ・プレティヒャ

中世への旅  都市と庶民


個人的評価★★★★★

 

1 本の概要

「中世への旅 騎士と城」の姉妹編。

もう一冊「中世への旅 農民戦争と傭兵」があり、三部作になってるみたい。


今巻は、タイトルの通り、都市と庶民に焦点を当てて、ヨーロッパ中世の様子を巡る描写をしていく。
『騎士と城』は中世のうち1000年~1300年頃のドイツの騎士の生活を中心に描写していたのに対し、本作は中世後期(1300年~1500年)のドイツに焦点をあてている。

 

2 大雑把な感想

中世後期の時期を扱っていることもあって、都市の発展とともに商人から企業体への萌芽や、職人集団の変容、ゴシック様式など、まさに中世の終わりの始まりが見えてくる感じがする。

個人的には騎士と城より面白かった。

 

職業名が姓名になるってヨーロッパ的で面白いよね。
ミュラー(粉屋)、シュミット(鍛冶屋)、シュナイダー(仕立て屋)、ベッカー(パン屋)とか、ドイツ語で読むとカッコいいのに、日本語にするとそれぞれちょっとおもしろい感じになる笑

シュナイダーって仕立て屋なのか・・・みたいな。

 

また、ヨーロッパにも被差別民(不可触民)の概念があるのは知っていたけど、死刑執行人や皮剥ぎ職人とかかなと思っていたら、ほかにも羊飼いや粉屋、風呂屋や煙突掃除人など割と幅広い職が対象とされていて驚いた
差別の仕方もインドのカーストに負けず劣らずの酷さで、(日本もそうだけど)似たようなことはどこでもあるんだなぁ。と思ってしまった。
こうなると一時期の進歩史観とかが出てくるのもなんとなくわかるなぁと思いながら読んでいた。

 

あとは、農民の住宅への描写が笑ってしまった
「家は外からみるといかにもつつましい、それどころかしばしば貧乏たらしい印象を与えるが、内部もまったくそのとおりである」P184

アルプスの少女ハイジの世界やね

 

農民階級の富裕化(一部)と、騎士階級の没落が交差し、農民戦争等へつながっていくような描写もみられ、ヨーロッパ中世とそれ以後の(情勢なども含めて)意外なつながりや発見ができる一冊