ウルソの読書記録

素人が暇潰しに読んだ本などの感想と紹介を書いていくブログです

52冊目「ゴリラ裁判の日」須藤古都離

 

 

個人的評価★★★★★

 

今月、花粉と寒暖差やばすぎませんかね。

どちらも体調悪くなる要因なので、どちらかだけにして欲しい(笑

 

1 感想

本屋さんをぶらついているときに、面出し陳列になってるのを見かけて、「なんだこれ?」とおもってタイトル買いした本。

あとで調べたらベストセラーかなんかになってるみたい。

 

夫(ゴリラ)を射殺された妻(ゴリラ)が、動物園を相手取って訴訟を起こす話。

なにを言っているか分からないと思いますが、店頭で見たときは僕も良く分かりませんでした(笑)

 

読み始めると、舞台はアフリカのカメルーン。ジャングルの中からはじまります。

そこで、動物行動学者が、人の言葉を理解するゴリラ(主人公ゴリラの母)をみつけます。

主人公ゴリラ(女性)は、母よりも言葉を理解し、手話のような形で会話もできます。

そして、手話を音声にする装置を利用して人間と同じように会話ができるようになりました。

 

これ、すさまじい発見だと思うのですが、その時点ではまだ公開されていなかった情報だったので世界では話題になっていなかったんだけど、その後、研究資金の問題等から政治家に紹介され、アメリカ(の動物園)にわたることになる。

 

主人公は、人間の言葉を理解する(場合によっては大多数の人間より理知的である)が、ゴリラとしての価値観も持ち合わせているが、どちらからも(母からも)疎外感を感じているような状態だった。

言語を理解することが、その人の意識を作るというのはなんとなく言語哲学(というかウィトゲンシュタイン)ぽいなあと思いつつ読み進めてた。

 

動物園でボスゴリラと番になるけれど、ボスゴリラは色々あって園内で射殺されてしまう。

その事情に憤った主人公が弁護士を雇い、訴訟を起こし、裁判があった。

というのでやっとタイトルにたどり着いた(笑

 

現在(アメリカ)と過去(ジャングル)を織り交ぜながら話は展開していくので読んでいて飽きない。また、ゴリラと人間の友情もあるし、ゴリラが一つの人権(?)主体として扱われないことへの憤りを主人公と共有できたりもする。

これはゴリラに限らず、人と同じように言語を理解し、意思疎通ができる動物等が出てきたときにどうするのか?という問題提起の話にもなっているのだ!

 

主人公は、一度裁判に負け、絶望感と自棄からプロレスラーになる(なんで?w)が、プロレスの興行主からの言葉をきっかけに、別の弁護士を雇い、再度訴訟をすることになる。

その訴訟の展開は、陪審員制度をとるアメリカならではっぽい感じがあり面白いので、かなりおススメ。(日本が舞台だと、そもそも訴訟却下されるだろうし)

裁判後の反響も描かれ、単なる動物愛護とも一線を画している。

 

個人的には、裁判が終わったあと(さらに、動物保護団体や、反対団体と色々あった後)に弁護士と主人公の会話が好き

P318

「ねぇ、私の裁判は本当に奴隷の反乱に過ぎなかったのかな?ゴリラが人間だって認められて、世界は変わるものだと思ってたのに。これからも何も変わらないのかな?」

私がダニエルに意見を求めると、彼は首を横に振った。

「君はもう少し賢いかと思ってたけどな。まだまだ人間について学ぶべきことがある。まず絶対に、なにがあっても哲学者の言うことなんて聞いちゃダメだ。哲学を勉強しようと思う時点で、かなり頭が弱いやつらだ。そんなやつらの言うことなんて価値があるはずもない」

 

警句的である(笑