ウルソの読書記録

素人が暇潰しに読んだ本などの感想と紹介を書いていくブログです

番外編『フラジャイル(漫画)にユーイング肉腫が出てたので読んだ』※希少癌理解促進のため。治療記録ブログと同じ内容

治療記録ブログ(https://ursusvirtus3.hatenablog.com/に載せた記事だけど、希少がんへの理解促進兼ねてこっちにも。

フラジャイルという漫画自体は面白いのでおススメです。

 

本屋さんフラフラしてたら、漫画『フラジャイル 病理医岸京一郎の所見』の23~25巻がJS1という作中に出てくるアジェバンド薬品の治験の話で、ユーイング肉腫の患者がその治験に申込み・・・

という話だったので購入して読んでみた次第。

漫画自体は面白い✨

前提として、この漫画は病理医を主人公として様々な病気の人達や、病院内部や製薬会社などを含めた群像劇といった感じの漫画なので、特定の病気に焦点を当てる感じの漫画ではないです。

ただ、話を展開していく中で、患者や関わる家族・医師・看護師などの状況も描かれていて読んでいて面白い漫画です。

面白いんだけど、がんに罹患したことあると患者の心情の動きが分かりすぎてしんどい時もあるので、若干敬遠していた漫画でもある(笑)

 

購入した巻では、二人のユーイング肉腫患者(友人関係)が治験に申込み、片方は治験薬が無い群、片方は治験薬適用群で治療を行っていく感じです。

主体は、治験の承認が進まないところでの医者や製薬会社の動きとかなんですが、上記のとおりの漫画なので、患者の様子なども結構載ってます。

 

アジェバンドとは?

作中の説明だと、他の薬と一緒に投与してその効果を高めるための物質で、2011年のノーベル医学生理学賞を受賞した樹状細胞の発見んが起爆剤となり、どんどん新しいアジェバンドが誕生している。らしい。

作中では、アミノ製薬という会社がJS1という画期的な薬を開発し、治験中とのこと

がんの場合だと免疫アジェバンドになるのかな?

参考:ファルマシア・53巻・1号・20頁 (jst.go.jp)

 

ユーイング肉腫患者として気になった点

肺転移ありでステージ3ってあるんか?

二人の患者はどちらも腎発生ユーイング肉腫で、

五味(19歳)は肺転移ありステージ3(5年生存率20%)

門川(25歳)は転移なしステージ2(5年生存率70%)と紹介されているけど、

ユーイング肉腫とかの肉腫って、限局性か転移性かで判断されて、ステージ分類でいうと転移あると問答無用でステージ4のイメージだったんだけど

 

 悪性骨腫瘍は、組織学的悪性度によりStage I (低悪性度)とStage II以上(高悪性度)に分けられ、次にT因子である「腫瘍の大きさ(T1:8 cm以下、T2:8 cmを超える、T3: 原発病巣で不連続な腫瘍)」により病期が決定されます(Stage IIA:T1、Stage IIB:T2、Stage III:T3)。悪性骨腫瘍ではリンパ節転移は稀であるため、リンパ節転移と遠隔臓器転移は組織学的悪性度によらずStage IVとなります。ただし、肺のみの転移よりも、所属リンパ節転移や肺外転移(骨など)を有する場合の予後が悪いため、肺のみの転移をStage IVA、所属リンパ節転移や肺外転移を伴う場合をStage IVBと分けています。

日本がん・生殖医療学会 | 骨軟部腫瘍 (j-sfp.org)

肉腫の適切な診断とステージ別治療 – がんプラス (qlife.jp)

でも医者の監修とか入ってるだろうしなあと疑問に。

 

予後(生存率)の数字はおそらくJESS(日本ユーイング肉腫研究グループ)から

治療・予後 | JESS - 全国の約50の研究施設が参加するユーイング肉腫研究グループ (jess-jccg.jp)

けど、このHP2021年から更新されてない・・・

 

副作用が重い方が効果が高いという誤解を招きやすい描写

抗がん剤治療が始まるなか、五味は副作用が強く出て苦しんでいるけれど、門川は副作用が軽く、自分には抗がん剤が効いていないのではないかと不安になる。

そして、実際、五味はJS1対象群で抗がん剤が奏効し、腫瘍が縮小していく一方、門川は4クール目後の検査で増悪・転移が見つかる。

物語の後半で門川もJS1を使える治験を行い、違う抗がん剤治療を行うがそのときは副作用が強く出て苦しんでいる。

漫画的な描写のためかもしれないけれど、これだと副作用が重い=効いているという誤解や、副作用が軽い患者への不安感を起こすんじゃないかなあと思った次第

基本的には、副作用の程度と効果は別物と考えて良いのではないかなあと。

副作用があまりないのですが、抗がん剤は効いているのでしょうか? | ヨミドクター(読売新聞) (yomiuri.co.jp)

 

転移後のVAIA療法+放射線て?

先日、転移後の治療法調べていて記事にしたけれど、漫画中で言及されていたVAIA療法は知らなかったので何かと思って調べた次第。

調べてみると、ヨーロッパでは限局性ユーイング肉腫への標準治療の一つっぽく、小児がん診療ガイドライン2016に転移時の治療として記載されているみたい。

(太字と下線はブログ主)

現時点において転移例に対して高い有効性が期待できる化学療法は存在しない。欧米
の臨床研究において,ビンクリスチン(VCR)+ドキソルビシン(DXR)+シクロホス
ファミド(CPA)による VDC 療法とイホスファミド(IFM)+エトポシド(ETP)に
よる IE 療法の交替療法,もしくは VCR+アクチノマイシン(ACD)+IFM+DXR に
よる VAIA 療法に外科療法,放射線治療を組み合わせた集学的治療を行うと一時的に
寛解,もしくは部分寛解に至るが,全生存率(OS)は 20%前後と不良である1, 2)。造血
細胞移植併用大量化学療法が行われているが,治療成績が改善したという明らかなエビ
デンスは得られていない.転移例に対する自家造血細胞移植(autologus stem cell 
transplantation:ASCT)を併用した大量化学療法の有効性について検討した

小児がん診療ガイドライン20168章 ユーイング肉腫ファミリー腫瘍 (jspho.org)

 

先日まとめた記事の元論文は2022年ベースだけど載ってなかったように思うけどもう一度読んでみようかな

 

ursusvirtus3.hatenablog.com

ほか、なんか治療の時系列が良く分からなかったり、抗がん剤治療のみで手術や放射線やってなくね?など色々疑問もあったけれどそのあたりはまあ漫画の展開的に描かなかったんだろうと自己納得させた(笑

人道的見地から実施される治験(EAP)

治験には、Expanded Access Programというものがあるらしい。

これは知らなかったので知識として持っておくと良いかもしれない

有効な治療法が存在しない場合に、未承認薬の治験の条件を満たしていなくても、その治験が効果が大きいと認められる等一定の条件を満たす場合に治験をできる制度らしい。

これを使って、門川は作中で治験に参加できた(けど、最終的には奏功しなかったような描写があり哀しい)

生命に重大な影響がある疾患であって、既存の治療法に有効なものが存在しない疾患の治療のため、未承認薬、未承認機器及び未承認再生医療等製品(以下、「未承認薬等」という。)を臨床使用するに当たっては、当該未承認薬等の使用によるリスクと期待される治療上のベネフィットのバランスを図りつつ、当該医薬品等の開発に支障を生じないことを前提として、これらの患者からのアクセスを確保するため、治験の参加基準に満たない患者に対して人道的見地から未承認薬等を提供する制度が導入されています(2016年(平成28年)1月22日付薬生審査発0122第7号、2016年(平成28年)7月21日付薬生機審発0721第1号)。
 本制度は、上記の疾患を対象として、患者が享受できると期待されるベネフィットの蓋然性が比較的高いと考えられる国内開発の最終段階である治験(注)の実施後あるいは実施中(組入れ終了後)の治験薬、治験機器及び治験製品を、治験の枠組みのもとで提供するものです。

(注)通常、効能・効果及び用法・用量が一連の開発を通じて設定された後に実施される有効性及び安全性の検証を目的とした治験や、当該治験の結果をまとめた後、その結果をもって承認申請を予定している治験であり、これを「主たる治験」と呼びます。人道的見地から実施される治験について | 独立行政法人 医薬品医療機器総合機構 (pmda.go.jp)

厚労省作成の制度に関する参考資料

000209680.pdf (pmda.go.jp)

 

とまあ、いろいろ適当に感想書き連ねたけど、EAP知れたのが収穫かな?

今治療中の人が読むのは結構辛くなるところもあるのでおススメするかは迷うところ(笑)

べつにがんじゃない人は、そもそも面白い漫画だし、希少ガンとかへの理解促進にもなるので読んでみて欲しいかも