個人的評価★★★★☆
魔女狩りについての新書。
岩波新書には『魔女狩り』(森島恒雄著)という名著というか長年の定番みたいな書籍があって、昔読んで面白かった覚えがあるんだけれど、あれはもう出版から50年以上経っているらしい!
50年以上前というと1970年代。
『はじめに』での説明によると、ヨーロッパ各国で魔女狩りについての古文書研究が活発化しだしたはその頃からで、特にドイツではナチスドイツが魔女研究していたことへの軛から1980年代になって活発になっていったという事情がある模様。
つまり、森島恒雄版魔女狩りから年数も経ち、当時からアップデートされた情報も多々あるのでそれらの研究を基にして魔女狩りについて新たに光を当てた本といえるのかもしれない。
読んでいくと、一般的な魔女狩りに対するイメージが刷新される記述も多く、森島版は魔女狩りの中の異端審問の描写がとても印象に残っているが、本書は魔女狩りの広がり方や事例を通した原因研究、ヨーロッパ史の変遷と併せた分析等が印象に残り、これはこれで面白かった。
・魔女の平均年齢は50歳以上
・魔女狩りで処刑された人数等について、その後の研究等で処刑にはならなかった事例も多数あることなどがわかる(だからと言って異端審問を肯定するわけではない)
・魔女狩り=暗黒の中世のイメージが強いけれど、必ずしもそういうわけではない
サバト観念が広がり、魔女が異端審問所でシステマチックに裁かれるようになるのは15世紀の30~50年代になってからであり、魔女狩りの最盛期は16世紀後半から17世紀半ばである。
主要な悪魔学書が出版されるのも16世紀からである。だから魔女狩りが中世の出来事だというのは間違いで、正確には近世ないし近代初頭の出来事なのだ
などなど、新たな発見も多い本であり、魔女狩りに興味があるならおススメです。