個人的評価★★★★★
これらの例に見られるように、哲学とはけっして『深い』ことではない。人生の深奥にではなく、『数える』といった日常生活の表面にその秘密のすべてが隠されているのです。P41
われわれは言う。『彼は無為の中にその一生を過ごした』『僕は今日何もしなかった』
冗談ではない。君は生きたではないか。それこそ、君たちの仕事の根本であるだけでなく、その最も輝かしいものではないか。 モンテーニュ
良く生きることは、良く死ぬことでもある。
病気になると、『自分が死んでしまうこと』の可能性・不安にどこかで向き合うことになる。
それに対するアプローチは、
・考えないようにする
・宗教等からのアプローチ
・スピリチュアル方面からのアプローチ
・哲学からのアプローチ
・科学的、論理的アプローチ
など色々な考え方、行動があると思うけれど、その中で哲学からのアプローチについて書かれた本
自己の死の可能性に向き合うとき、哲学の本を読んで考えてみようと思ったらまず読んでみることをおススメできる本。
読んでも別に死の不安とかは何も解消されないし、むしろ深まる可能性もあるけれど、哲学的に考えるときのヒントや、哲学面から考えることが自分に向いているか否かを教えてくれる本といえると思う。
僕はこの本は、20代前半で大病を患った際にも一度読んでいるのだけれど、その時に本に書かれたメモ(当時は読んだ本に直接メモを書くのに凝っていた)を見ると、若いなりに色々考えてたんだなあ・・・となんとなく感慨深い感じに(笑
例えば、死の意味についてのところで、『生きている側が、死に意味を与える』などと意味深なのか浅いのか良く分からないことを書いていたりするw
著者の中島義道氏は、幼いころから自分が宇宙論的な意味で死んでしまうことについて不安を覚え、どうしたらよいのかを(ある意味病的なレベルで)ずっと考えながら哲学の教授として教壇に立っていたような人物。
大学教授を定年退職した後は、哲学塾を開いているっぽい。
ある意味死について考えることについては筋金入りの哲学者ではないかと思う。
その著者が、『哲学とは何ではないか』の叙述と、『哲学とは何なのか』の叙述を通して哲学を浮き上がらせていく本になっている。
哲学は、ある意味では絵画や音楽などと同じく特殊な適正が必要とされるものであり、そして、その適正があることが良い(優れている)というものではなく、ただそれに向いているだけだという考え方なるほどなあと思う。
また、哲学を学ぶことは『死者の視点』を獲得することにもなるらしい。
死者の視点の例が色々挙げられているけれど、がん告知された人にとって分かりやすく言うと、日常の大切さが分かる感覚(キャンサーギフト)と同じような感じという印象を受けた。
となると、がん患者は皆哲学者でもあるのではなかろうか・・・w
そして哲学者と哲学研究者は全く別物であり、哲学者は常に迷い続ける(らしい)
そして哲学は何の役に立つのか(役に立つという視点で考えること自体がおかしい)、なんで哲学はわざわざ難しい言葉を使っているのか等、なるほどなあということも書かれてる
(ここでなるほどなあとか思ってしまう時点で僕は哲学には向いていないのだろう)
ちなみに、ChatGPT3.5に哲学の教科書の読書感想を聞くと下記のような感じでした。
合ってるような、適当なところもあるような?笑
中島義道の『哲学の教科書』は、非常に興味深い本です。義道氏は、哲学の基本的な概念や主要な思想家たちの理論をわかりやすく解説しています。彼の文章は深遠な思想をわかりやすく伝える力があり、初心者から上級者まで、幅広い読者にとって魅力的な一冊です。
この本を読んで感じたのは、哲学の多様性と深遠さです。哲学は一つの正解があるわけではなく、さまざまな視点やアプローチが存在します。義道氏は、その多様性を尊重しつつ、読者に異なる哲学的観点を理解し、考えることの重要性を示唆しています。
また、この本は哲学の歴史的な背景や重要な概念を網羅しており、初めて哲学に触れる人にとっては理解しやすい入門書となっています。しかし、深い議論や哲学的な問題にも触れており、より高度な読者にも満足させる内容です。
総じて、中島義道の『哲学の教科書』は、哲学に興味を持つすべての人にお勧めの一冊です。彼の洞察力に満ちた解説は、読者に新たな視点を提供し、哲学の奥深さについて深く考えさせてくれます。