マルクス関連入門書読み漁り6冊目
個人的評価★★★★☆
どんな入門本だった?
本書は、『99%のためのマルクス入門』(以下、表紙が赤いので赤マルクス)の姉妹編として書かれたマルクス入門本。らしい
赤マルクスは、個々の細かい点には囚われず、マルクスの全体像を提示するような感じの本だったけれど、本書はマルクスの名言(有名無名を問わず)を20個ほどピックアップし、各名言の解説を通じてマルクスの思想の核心部分を浮き上がらせていくというような構成になっている。(結論から考えるマルクス)
また、赤マルクスに比べてマルクスの人間中心主義批判(動物倫理含む)がより前面に出てきている印象がある。
これは、赤マルクスと共通した視座である、『マルクスを古典として読むこと(=マルクスを現代に生かす)』ことに即するものだろうと思い、その実践的なものとしても捉えられ、批判的マルクス主義という著者マルクスへの姿勢の一端が伺えて良いと思う。
本書も入門本として読めるものであるけれども、個人的には、たしかに個々のマルクスの思想的核心のようなものは理解できるが、本書単体では全体像は掴みにくいという印象がある。
民法のパンデクテン方式(総論で抽象的規定を集め、各論で個別的規定を集める)や、刑法の結果無価値・行為無価値論のように、全体像を把握してから個別解釈を考えていくという学び方に慣れている身としては余計に演繹的な方法に親和感があり、帰納的な方法が苦手というのもあるかもしれない。
そのため、赤マルクスを主(先に読む)として、本書を副(後に読む)として読んでいくことが一層マルクスへの理解が深まる本ではないかと思っている。
しかし読んでてたまに感じたのは、読者層はやっぱり完全素人というよりある程度思想系に親しんでる人を想定してるのかな?という点
例えば、『哲学者たちは世界を様々に解釈してきただけだが、大切なのはそれを変えることである』という名言の解説の章で
『この言葉こそ「宗教は民衆のアヘンである」(『ヘーゲル法哲学批判序説』)と並んで、間違いなく最も有名なマルクスの言葉であり、だれでも一度は聞いたことがある言葉でもあるだろう』P130 ~
という記述があるけれども、おそらくホントの一般人というかマルクス素人はそんな言葉聞いたことないと思う(宗教は民衆のアヘンも聞いたことあるか怪しい)
身近な例を一般化するのはアレだけれど、僕個人の友人でこの言葉を知っている人は、大学進学した友人でもある程度本読んでたり思想系に興味がある人だと思うし、大学進学していない友人は基本的にマルクス=共産主義くらいしかしらないと思う。
その意味では、やっぱり大学で哲学等を学んで教えている人達は、接する人たちの思想への理解に対する水準が違うんだなあと思いながら読んでいた次第
それが悪いとは全く思わないんだけど、マルクスが労働者層へ考えを説明するのに苦労したのと同じことが現代でもあるよねと思ったりした(笑
以下、個人的メモ
Aneignung(獲得)⇔疎外
人間が労働において自己の本質を対象化し、対象化した成果をしっかりと我がものとすること。
現象→Erscheingung Phanomen
いずれも、より根底にある「本質」が外に現れ出たものという含意がある。
利潤の本質は剰余価値であり、源泉は労働力の搾取
経済とは再生産過程。
生産→分配→交換→消費
生産の在り方によって全過程が規定される
分配の在り方は生産によって決まるので、生産をそのままに分配を変更しようとしても『公平な分配』は真実には実現しない。
個人的所有の再建とは?
否定の否定→資本主義が自らを否定せざるを得ないこと→資本主義がかつて否定した契機の再肯定がもたらされる→労働者が自らの労働生産物を疎外されずに自ら獲得できるという意味での私的所有(=個人的所有)
協同と土地と労働それ自身によって生産されれう生産手段の共同占有の基礎の上に、個人的な所有を復元(再建)する