ウルソの読書記録

素人が暇潰しに読んだ本などの感想と紹介を書いていくブログです

14冊目「偽情報戦争 あなたの頭の中で起こる戦い」小泉悠・桑原響子・小宮山功一朗

 

 

 

個人的評価★★★★☆

ディスインフォメーション(偽情報)に焦点を当てて、ウクライナ戦争や中国・ロシア、アメリカや各国の情報戦の展開やインフラ、民主主義との関連など幅広く論じた本。

読んでいくと、自分たちが普段使っているSNSも情報戦の手段とされている一方、情報を判断することの難しさ、日本の情報戦対応の遅さなど危機感も感じる内容になっている。

日本のファクトチェック機関は他国に比べて著しく少ないというのは意外だった(それも、既存のメディアが設立したものはファクトチェックにならない等批判されていた覚えがある)

複数のファクトチェック機関が存在することにより、相互監視的な感じで分散型の妥当性が担保できるようになればと思う。

 

これは、2023年1月に出版された本であるため、その後のイスラエル・ガザの紛争等は取り扱われていないが、本書に書かれている情報戦の問題は今でも当てはまるものとなっている(というかより、危機的な形で情報戦の問題が顕在化してきていると思う)

ディスインフォメーションやミスインフォメーションを意図的に使って伝播してくる主体にたいしてそれをファクトチェックや正しく指摘して訂正する労力の割に合わなさは、最近のX上での炎上を見ていても強く感じるところでもある。

 

一定数、複雑な事柄について複数の情報に当たって自身で判断するより、明快な論旨で分かりやすい言葉で伝えてくる人のことを信じ、反対する情報に対して攻撃的になる現象は、情報戦と民主主義との関連でいえば衆愚政治に近くなっているのではないだろうか。(専門家が軽視され、専門家に似せたソフィスト的な言論人がもてはやされる)

 

国策として情報ツールを制限する方法を与えると民主主義を抑制することになってしまため、一人ひとりの情報リテラシーが高まることが必要だか、集団化した人の行動をコントロールすることは難しい。

情報戦への認識を深めることの必要性と併せて、個々人の情報リテラシーが今後(国内の分断という観点からは)重要になってくるのかなあという月並みな感想だか、そのような印象を持った。

一読者としては、今後、またより広い知見や経験を踏まえた続刊的な本が出ることを期待。