ウルソの読書記録

素人が暇潰しに読んだ本などの感想と紹介を書いていくブログです

28冊目「人新世の「資本論」」斎藤幸平

 

 

 

個人的評価★★★☆☆

 

最近、社会主義方面に興味が湧いてきたところに本屋さんで「2021年新書大賞第1位!」の帯と資本論の文字に惹かれて購入。

「じんしんせい」じゃなくて「ひとしんせい」と読むらしい。「じんしんせい」の方がカッコいい気がするのに・・・。

 

個人的な偏見として、

・本の帯や表紙に著者の上半身写真があってドヤ顔してる本(自己啓発本は除く。)

・著者だけが本当の答えを知っている的な言説や、他の研究者たちが知らない新たな発見的な言説をしている本

・ベストセラーになったあと、著者がテレビのコメンテーターとかで専門外のことまでコメントするようになっている

・やたら他の学者の引用をしている本(説の紹介ではなくは、自説の補強に抜粋して使っている)

・断定や扇動的な要素が多い本

などなど、これらの要素がある本はあまり信用ならないというか、読む際には素直に読むが、一通り読んだ後、同分野に自分があまり知識がないならもっと学ぶか、離れた視点から良く考えてみた方が良いと思っている。

 

本書は環境問題を資本主義の発展や技術開発により解消することはできないとかんがえ、気候ケインズ主義(グリーンニューディールとか)も欠点があるとする。

そのうえで脱成長型社会+水平的な共同体(コモンズ)的な社会の実現が必要だとする。

その社会観を、最近のマルクス手稿研究(MEGAプロジェクト)を通して、著者はマルクスの真なる解釈(マルクスが最晩年にめざしたコミュニズムは、平等で持続可能な脱成長型社会である。)を見つけた。

そして、これからの社会のためには、本当のマルクスの考え方を参考にする必要があるといった感じの言説という印象。

 

気候ケインズ主義とか、技術発展による改善への批判とかは理解できるところ多々あるし、脱成長型社会やコモンズ(共同体的)社会も共感できるところが多々あるし、そうすべきだなと思うことも多い。

ただ、資本論マルクス)をもとにするというより、自分の問題意識に合わせてマルクスを読んで、原典に無いものを読み解いているような感が否めない。そのためにマルクスを根拠にするのはちょっと違うんじゃないかなあという気がする。(自説の補強にマルクスを使うというならわかる)

大体、著述されているようなマルクスの解釈の大転換みたいな発見があったら学会とかでも大変なことになってると思うんだけどどうなんだろうか。

 

いずれにせよこの分野(社会主義や環境問題)は全然分からないので、もっと色々勉強したいところ。

なんか問題意識とかは分かるし共感できるんだけど、解決策にうーんどうなんだろ感があり、いまのところ評価は普通という感じで。