個人的評価★★★★
「マルクスに立脚しつつも、あくまで是々非々でマルクスを利用して社会主義の今後を展望しようとするのが本書の一貫した視座」と書籍の最後に記載されているように、単にマルクス主義賛美のような感じではなく、タイトルにもあるように批判的マルクス主義といった感じの本。
そのうえで、社会主義の入門本として、マルクス主義ベースに筆者の捉える社会主義を概説していくものであり、読んでいくとたしかにマルクス主義とか社会主義へのイメージは変わって行く感じはある。
ただ、第一章の導入のような部分で、いきなり「ゲノッセンシャフト理解」とか出てきたりして、ほんとに入門本にしようとしてる??とか思ってしまう箇所がなくはない(ゲノッセンシャフトは直訳すると共同組合とかそんな感じ。ここでは共同体論とかそんな感じか?読み進めていくと後半のほうに解説もあるが、いきなりこんなことば出てきてもマルクス知らない人は困惑すると思う)
が、個人的にマルクス主義とかは、やたら衒学的な言葉を好む印象があるので、著者は特段意図せず、一般的な読者でも知ってる言葉だと思って書いたと思いたい。(事実、全体的にはなるべくわかりにくい専門用語は使わず解説してくれている。また、読者は、自分が知らない語彙とか出てきたら基本的には調べながら読む方が良いので著者が不親切なわけでもない)
環境問題への対応などが主流化してきた現代において、社会主義が見直されるのもわかるし、ソ連崩壊=マルクス主義(本来的マルクス主義)や社会主義の失敗ではない。
ということも読んでて理解できる。
ただ、じゃあ社会主義の世界になっていくにあたってどうしたら良いの?という部分になるといきなり抽象的というか概念的な感じになっちゃうのは、社会変革を考えていく上ではなかなか難しい気もしなくもない。
個人の素人的な感想としては、批判的という意味では本書は面白いし、本来のマルクスの考えを取り出しているのも面白いけれど、じゃあ今の現代的資本主義から考えが変わるかというとなかなか難しい。社会主義や共産主義となると、必ずマルクスに立ち戻る感じの論説や書籍が多いように思う(マルクス再評価とかも含めて)けど、マルクスに拠らない社会主義的な運動や理論てないのかなあと思ってしまう。
とりあえず、著者の他の本も読んでみようかなと思うくらいには面白かった。